【読書記録】2026年5月
今月より、月1のペースで読書記録を開始します。
これまでは本を読了する度に、都度その本について記事を作成するという形を取っていましたが、これからは1ヶ月毎に読了した本を記録しくことにします。
『一本の鎖─ 地球の運命を握る者たち』 広瀬隆
著者である広瀬氏を知ったきっかけは、『赤い楯』(全四巻、1991年)という本でした。「ロスチャイルドの謎」を副題に持つこの大作は、国際金融や産業に深く関わっているといわれるロスチャイルド家の実態に迫っており、彼のその情報収集能力と洞察力の深さに感嘆しました。
本書『一本の鎖 』が刊行された2004年は、私がまだ5歳の頃です。
アメリカのイラク侵攻から約一年が経ち、「大量破壊兵器」をめぐる議論や、ビン・ラディン、フセインの名が連日メディアを賑わせていた時期に刊行されています。未だ混迷を極めるアメリカと中東の情勢への理解したいと思い、手に取りました。
イラク攻撃の背景にある金融と軍事の関係、欧米メディアを支配するとされる資本の問題、石油利権やネオコンの台頭など、当時起きた事件の数々が「一本の鎖」でつながっているという洞察を膨大な資料をもとに論じています。背景知識の乏しい私には難解な箇所も多かったものの、世界の出来事の裏に大きな力学が働いているという構図は非常に興味を惹かれます。
一方で、彼の主張にはその正当性や論理に疑問を投げかける専門家がいることもここに記しておかなければなりません。専門知識がない私には判断できかねますが、新しい切り口で世界の記述に挑んだ彼の著作に世間的に賛否が分かれる主張があることは事実です。
しかし、メディアの報道や事実とされていることの背後に何があるのか、一部の権力により歪められた主張が流布されていないか、について常に熟慮を巡らし、世界の複雑さへの関心を喚起する著者の姿勢には敬意を表し価値があるといえるのではないでしょうか。
『華麗なる一族』(上・中・下巻) 山崎豊子
戦後期に鉄鋼業と銀行業で財を成した華麗なる一族、万俵一家の盛衰を描いた物語です。
金融業界をめぐる様々な権力闘争のみならず、清廉潔白が求められる銀行頭取の地位にありながら邸宅で妻妾生活を営む万俵大介と、その家族、そして家庭教師から妾となり一族の閨閥拡大をも一任される高須相子との人間模様も魅力の一つといえます。
著者である山崎氏は、『白い巨塔(1963年)』『沈まぬ太陽(1999年)』『不毛地帯(1976年)』『大地の子(1991年)』など、社会派小説家としてあまりにも多くの社会問題に切り込んでおり、その物語構成のみならず圧倒的な取材量(「取材なくして執筆なし」と彼女は語っていたそうです)にも定評があります。
財務省(当時は大蔵省)や日銀など、銀行として拡大を図るために重要な金融界の巨大組織との折衝、息子・鉄平との親子関係や、彼が実質上の経営を務める阪神鉄鋼をめぐる一連の事件など、あまりにも多くの出来事が絡み合うこの小説はフィクションではありますが、ノンフィクションかと思わせるほどのリアリティがあります。
『神々の指紋』 (全二巻) グラハム・ハンコック
本書は1996年に出版され、英国でベストセラーにもなるなど、一世を風靡したノンフィクション作品です。
ピラミッドやスフィンクスに代表される世界各地の古代遺跡や神話の数々から、最終氷河期、およそ1万5000年ほど前に、高度な文明が地球上に存在していたという少し都市伝説的な仮説を真剣に検証しています。
こちらはネットフリックスでドキュメンタリー(『太古からの啓示』全2シリーズ)も制作されており(とても面白い!)、今なお熱烈な支持者がいる一方、学術界からは批判の声も多いようです。
考古学界での定説を覆す本書の主張は当時あらゆる議論を巻き起こしたものの、『エコノミスト』誌の東アフリカ特派員の経歴を持つ彼の取材力は恐るべきものです。
ただ、世界中にある神話の一致性や古代遺跡の建設年代の大幅な修正など、学会で常識とされる定説を覆す仮説を裏付ける科学的な主張にはさらなる強力な証拠とそれに基づく論理が必要となることは容易に想像でき、彼の人生をかけた試みが実を結ぶ日は来るのか、はたまた事実に基づかない妄想に過ぎないのか、非常に興味深いです。
『ロスト・シンボル』(全三巻) ダン・ブラウン
『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』に続く、ラングドン教授シリーズの3作目です。
宗教象徴学者(現実世界には存在しないらしい)のロバート・ラングドン教授が宗教や結社にまつわる事件に巻き込まれていく様子を描く、科学と宗教を題材とした小説です。
第一作、第二作目と読んできましたが、その全てが宗教と科学の対立に基づく世界に隠された謎をめぐる構成となっています。実在の組織や建造物を基に、まるで史実かと思わせるような論理で読者を物語の世界に引き込みます。
私の中では、やはり映画でも話題となった『ダ・ヴィンチ・コード』→『天使と悪魔』→『ロスト・シンボル』の順で面白かったですが、本作も人間の意識や思考に関する驚異の科学とフリーメイソンの秘宝を見事なまでに物語に落とし込んでおり、事実ではないにしても想像力と思考力を掻き立てられます。
三作公開されている映画を見てから小説を読み始めましたが、やはり背景知識がしっかりしていないと映画ではあまり深い理解ができず、小説を通して物語の骨格を学ぶのが適した作品だなと思います。

