デジタルデトックスのすすめ
私たちの人生を支配する板

現代に生きる私たちは毎日欠かす事なくスマートフォンやパソコンに触れ、あまりにも多くの時間をデジタルデバイスに触れて生活しています。
SNSの通知、メール、動画、ニュース。気づけば一日中画面を見つめているという人も少なくないでしょう。
試しに、スマホで自分が一日のどれほどの時間をスマホの画面を見て過ごしているか確認してみましょう。
iPhoneユーザーであれば、設定アプリの「スクリーンタイム」から、自分が一日に何時間スマホの画面を見ているか、どのアプリに何時間使っているか、スマホの持ち上げ回数、通知の回数までわかります。
これを見て愕然とする方も多いと思います。私たちの一日は24時間ですが、睡眠時間や食事の時間を除けばおよそ10数時間しか活動時間はありません。そのうちの半分以上をスマホの画面を見て過ごしている人は驚くほど多いです。
しかも、これはスマホ単体でも時間なので、テレビやパソコンなどを含めると一日のほとんどの時間を私たちはデジタルデバイスに支配されていると言えます。
デジタル技術は私たちの生活を便利にし、世界中の人と繋がることを可能にしましたが、その一方で、情報の洪水に溺れ、常に何かに心を奪われて、心の平穏を失いつつあるのも事実です。
デジタル依存がもたらす心身の疲れ
私たちは無意識のうちに、スマートフォンを手に取ります。何も用事がないのにふとした瞬間にスマホに手を伸ばします。
これは一種の中毒で、私たちは得る快感はさらに強い快感を渇望し始めます。
これを繰り返すことで、やがて私たちの脳はさらに強い快感を求めるようになり、依存状態を生み出します。たかがスマホと思うかもしれませんが、これはギャンブルや薬物、タバコなどによる依存状態と大して変わりません。
結果として、集中力の低下や睡眠の質の悪化、他人との比較による自己否定など、心身にさまざまな影響を及ぼします。
とくにSNSでは、他人の「幸せそうな瞬間」だけが切り取られて流れてくるため、自分の人生がつまらなく感じてしまうのです。
少し乱暴な言い方をすれば、強い快感に慣れた脳は、日々のちょっとした幸せや運動などから得られる快感を感じにくくなります。
スマホ時間が増えることで運動時間が減ることは周知の事実ですが、これは単純な時間の問題ではなく、私たちの心が変容することで起きる問題でもあるのです。
支配からの解放
かつて、私たちが一日に接する情報量は、今の1%にも満たなかったと言われます。
今や、1日で新聞数百紙分の情報が私たちの脳を通過しているのです。しかもそれらのほとんどは取るに足らない、実はどうでもいいことばかりです。
私たちの脳は情報社会、デジタル社会の進化のスピードに追いついていません。
本来、私たちの身体は自然や人との会話の中でゆっくりと刺激を受けるようにできているのです。
今老年期を生きる人々はスマホのようなデジタルデバイスのない世界を生きてきました。今の若い人ほどに多くの時間をそれに費やしてはいないでしょう。
今はまだ大きな問題になっていないかもしれませんが、特に現代に生きる若い私たちのような世代が老年期に入り、そして死の床で自分の人生を振り返った時、こう思うのです。
「なんであんなにスマホばかり見て過ごしていたんだろう」
私たちは瞬間的な快楽に支配されすぎていて、真に大切な時間という財産を失っていることに気付いていません。それにあなたが気付くのは死という時間の終わりを意識し始めた時でしょう。
何も、高尚なことをする必要はありません。スマホから離れることで生まれた時間は自分の大切な人と話し、触れ合い、心を通わせる時間にあててください。旅に出るのもいいでしょう。本を読んだり映画を見たり、散歩や買い物でも構いません。
とにかく、あなたのために時間を使ってください。
そのためには、意識的に「情報を遮断する時間」を設けることが大切です。今最も私たちに必要なことは「デジタルデトックス」です。デトックス(detox)とは「毒(toxin)」の「取り除く、排出する(de)」を意味します。
デジタルデトックスの効果

デジタルデトックスを行うと、まず頭の中が静かになります。
通知やSNSの更新に気を取られなくなることで、思考がクリアになり、自分の内側に意識が向くようになります。
この変化の重要性に気付いている人は、意外と多くありません。これは瞑想やマインドフルネスの本質と同じです。
常に外から押し寄せる情報や刺激を遮断し、今この瞬間の自分に意識を向けることで、心は次第に落ち着きを取り戻していきます。
人の脳は、本来「何もしない時間」の中で整理され、創造性を発揮します。散歩やお風呂に入っている時が創造性にとって最も大切だと多くの賢人が語るのはそのためです。
それを絶え間ない通知や情報によって妨げてしまえば、心は常に緊張し、休まることができません。
デジタルデトックスは、瞑想のように心の余白を取り戻す行為とも言えるのです。
また、時間感覚を取り戻せるという効果もあります。
SNSを見ていると10分が1時間に感じることもありますが、デジタルから離れることで「今」という時間を丁寧に味わえるようになります。
これは、マインドフルネスで重視される「今ここ」の感覚を体感する第一歩です。
さらに、心が穏やかになるという変化もあります。
外からの刺激が減ることで、不安や焦りが薄れ、睡眠の質や人間関係まで改善するケースも多いです。
瞑想と同じく、デジタルデトックスは「何かを得るため」ではなく、「余分なものを手放すため」の行為。
情報や思考のノイズを減らすことで、私たちはようやく本来の自分と向き合えるのです。
今日からできるデジタルデトックスの方法

デジタルデトックスは特別なことではありませんが、ただあまりにもスマホ依存の生活に慣れた人にとっては簡単なことではありません。すべてを断ち切る必要はなく、日常の中に少しずつ取り入れるだけで十分です。
デジタルデトックスを成功させるための秘訣をまとめます。
- スクリーンタイムで現在地を知る、毎日を振り返る
- 不要なアプリを消す
- 就寝前後30分~1時間はスマホを触らない
- 集中したい時や使う必要のない時はスマホを遠くに置いておく
- 食事中はスマホを手に取らない
- 通知をオフにする(音だけでなく画面通知も)
- 休日は自然の中で過ごす
- 瞑想を取り入れる
- SNSをチェックする時間に制限を設ける
これだけでも、驚くほど心が軽くなります。
大切なのは「情報に振り回される時間を減らし、自分の時間を取り戻す」という意識です。
デジタルデトックスはあなたの人生を変える
デジタルデトックスは単なる習慣ではなく「生き方の選択」です。
常に刺激を求め続ける生活から一歩離れ、自分の感情や考えと丁寧に向き合う時間を取り戻すこと。
それこそが、現代を生きる上で最も贅沢で豊かなことなのかもしれません。
便利さと引き換えに失った「静けさ」を、もう一度取り戻してみませんか。
その瞬間、あなたの心はきっと、本来のリズムを取り戻すはずです。

