【読書記録】『News Diet』著ロルフ・ドベリ
「情報があふれる世界で、よりよく生きる方法」――これが本書のサブタイトルです。
タイトルの『News Diet(ニュースダイエット)』からもわかるように、テレビ・新聞・SNS・ニュースアプリなど、日々私たちを取り巻く“ニュース漬けの生活”から抜け出そうというのが本書のテーマです。
読み始める前、私は本書を「必要以上にニュースを読まないようにしよう」という類の話だと思っていました。
ところが、本書のメッセージはもっと過激で明快でした。
「ニュースを完全に断て。」
これが、著者ロルフ・ドベリ氏が本書で最も伝えたいメッセージです。
🔎ニュースを断つべき理由
本書で述べられる理由はさまざまですが、核心は次の3点に集約されます。
- ニュースは現実を正しく反映していない(むしろ歪めている)
- ニュースの大半は私たちの人生に無関係である(知ることはむしろ悪影響を及ぼす場合がある)
- ニュースは重要なことを過小評価し、どうでもいいことを過大評価させる
私たちは「社会人ならニュースを知っておくのが当然」と考えがちです。
しかしドベリ氏は、そのような考えに警鐘を鳴らします。
ニュースは「広告収入」によって成り立っている以上、視聴数を稼ぐことが目的になります。
その結果、センセーショナルな事件やスキャンダルばかりが報じられ、私たちは現実を歪んだ形で認識してしまうのです。
また、ネガティブなニュースはポジティブなものより注目を集めやすいため、私たちは実際以上に暗く、混乱した世界に生きているように錯覚してしまいます。
記事の量も問題です。クリック数を稼ぐために、どんな優秀な記者でも“薄い記事”を量産せざるを得ません。
結果として、読む価値のある情報よりも、“消費されるだけの情報”があふれてしまうのです。
🧠 情報を断ち、本質に戻る
ドベリ氏は、時間をかけて調査し、熟慮された長い文章こそ読む価値があると語ります。
短く刹那的なニュースでは、真の理解には到達できない。
むしろ、そうした情報に触れ続けるほど「世界を誤解するリスク」が高まるのです。
もちろん、ニュースを完全に断つことは現代社会では容易ではありません。
ですが、この現状を逆にとらえると「断つ意識を持つ」ことは、不要なニュースを自然と避け、本当に重要な情報だけが自分のもとに残るようになるのです。
『News Diet』は、情報が氾濫する現代社会に生きる人々にぜひ読んでほしい一冊です。
ニュースを“減らす”のではなく、“断つ”。
それは、我々の持っている有限の「時間」という財産を取り戻すための取り組みでもあります。
「情報社会を生きる私たちは、もはや『情報の断食』を学ばなければならない」――
意識して多すぎる情報を避けることは、私たちがより身近でより大切なことに気付き、自らの「能力の輪(本書で紹介されているウォーレン・バフェットの言葉)」の中で暮らすための重要な習慣であると強く確信できる、本書はそんな一冊です。


