【投資の鉄則】「分散投資」のすすめ

投資をしない人は「円一極集中」の投資家である

投資に興味を持っている人なら、誰しも「分散投資」の重要性について、耳にしたことがあるだろう。分散投資とは、資金を複数の資産に振り分けることで、特定の資産が値下がりした時の影響を和らげる考え方であり、リスクをゼロにするものではないが、一つの資産に集中するよりも、損失が大きくなりすぎるのを抑えやすい。

投資できる資産には、株式や債券、コモディティ(金や原油などの商品)だけでなく、暗号資産(仮想通貨)や、円やドルといった通貨も含まれるが、では、投資をしない人はリスクがゼロなのだろうか。

投資をしない人は、資産の多くを現金や預金で持っているが、それは円という一つの通貨に全てを預ける「円一極集中」の投資家と同じことだと言える。円の信用が大きく揺らぐ事態は想像しにくいと感じる人にとっても、時間がたてば物価が上がり、手元の現金の価値は目減りしていく。総務省の統計では、消費者物価(総合)は2023年に前年比3.1%、2024年に2.5%上昇しており、今の100万円で買えるものが、将来も同じ金額で買えるとは限らない。分散投資の重要性は、投資をしていない人にとっても、無関係ではないのである。

「卵を一つのカゴに入れるな」

なぜ私たちは分散投資を続ける必要があるのかといえば、未来は誰にも予測できず、私たちが不確実性の高い世界に住んでいるからだ。

「卵を一つのカゴに入れるな(Don’t put all your eggs in one basket.)」という格言はあまりに有名だが、分散投資の重要性を語るうえで、これ以上ない表現でもある。持っている卵を全て一つのカゴに入れておけば、そのカゴが何かの拍子に衝撃を受けた時、卵を全て失ってしまう。同じように、一つの資産(それが円であっても)に全ての資金を投じていれば、何かの拍子に、その多くを失うかもしれない。投じた資金がゼロになっても構わないのなら話は別だが、長く相場の世界に留まりたいのであれば、資金はなるべく分散させておきたい。

どのように分散するか

一口に分散投資といっても、そのやり方は様々で、より多くの資産に資金を投じればよいとはいえ、組み合わせは無限にある。例えば株式一つをとっても銘柄は数えきれないほどあるが、私は基本的に、個別株ではなく、ETF(上場投資信託)や投資信託のように、多くの銘柄がパックになった商品を選ぶことをお勧めする。それだけで、ある程度のリスク分散ができるからだ。

とはいえ、株式だけでは偏りが残る場合もある。年齢や余裕資金、投資の目的、どこまで値下がりに耐えられるかに応じて、債券などを組み合わせることも有効だろう。ここで大切なのは、将来の値動きを予想して比率を変えることではなく、自分の状況に合わせて比率を予め決めておくことである。

値動きの異なる資産を組み合わせると、一方が下がった時に他方が支えになり、全体の振れ幅を抑えやすい。例えば(かなり単純化して言えば)、株式が下がる局面で、安全資産とされる金が買われて上がることが、歴史的には少なくなかった。ただし、常にそうなるとは限らず、両方が同時に下がる局面もあるので、「必ず逆に動く」と考えてはいけない。

経済は「振り子」のようなものだと考えると、イメージしやすい。未来は予測できないが、株式のように長期的に上昇してきた資産は多く、そのうえで短期的には、上がっては下がるサイクルを繰り返してきた。そこで、値上がりした資産を一部売り、値下がりした資産を買い足して、決めておいた比率に戻す作業(リバランス)が意味を持つ。続けるうちに、結果として「高いものを売り、安いものを買う」形になり、長期的な資産形成に役立つ可能性がある。もっとも、売買にかかるコストや税金があり、値上がりしている資産を売る心理的な抵抗もあるので、実際には、それほど簡単な話ではない。

それでも、分散をしていれば、資産が底をつく、あるいはそれに近い状況は避けやすくなる。大きく損をしないことが長く続けるための条件であり、これこそが投資で最も重要な考え方の一つだと、私は考えている。

どう分散するかは、あなた次第

私にできるのは、分散投資の重要性と、そのためのヒントを伝えることだけで、どのように分散するかは、皆さん各々が決めることだ。リスクを取りたい人は(もちろん自己責任で)集中投資を選べばよく、取りたくない人は、できるだけ分散すればよい。年齢、収入、資金、性向、価値観、目的によって、考えられるパターンは様々で、どんな資産に期待を寄せ、どんなポートフォリオを組むかは、皆さんの自由である。

ただ、どんな場合でも忘れてはならないのは、未来は誰にも予測できず、世界は不確実だということだ。分散は、その不確実性によるリスクを小さくするための知恵であり、長く投資家でありたいなら、分散を基本に考えたい。

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