最近のスキンケア――基本は「何もしないこと」

スキンケアは、多くの人にとって、答えのない終わりのない旅のようだ。

そこで、私にとっての現在の最適解を紹介したい。ベースにしたのは、アメリカ皮膚科学会(AAD)が「財布に優しいスキンケア(Skin care on a budget) 」として示している、シンプルで費用を抑える考え方である。そこに、私の肌に合うものを経験に基づいて選び、さらに引き算(時には足し算)を重ねている。

【「アメリカ皮膚科学会」推奨】『財布に優しいスキンケア:SKIN CARE ON A BUDGET』

あなたの肌には、多くの微生物が住んでいる

まず大前提として、肌にはあまりにも多くの微生物(マイクロバイオーム)が住んでいる。彼らは私たちが肌の健康を保つうえで欠かせない存在で、肌を覆ってバリア層をつくっている。

つまり、スキンケアがこのバリアを壊してしまうなら、その商品がどんな保湿効果を持っていようが、どんな有効成分を含んでいようが、長期的にはあなたの肌の健康に悪影響を及ぼしかねない。

化粧品業界のCMや広告をみて、この私たちとともに生きてきた生態系を守るという考え方に基づくことを主張している企業があっただろうか。もちろんゼロではないと思うが、彼らは短期的な利益(肌にとっても彼ら自身の給料にとっても)に囚われ、長期的に健康な肌を形成する(この言葉は御幣を生むかもしれない。もともとある自然の豊かな肌を取り戻すという意味だ)ということに注力していない。

乾燥、そして乾燥

なぜ私たちの肌は乾燥するのか。洗浄剤も保湿剤も使っていなかった狩猟採集民は、肌荒れに悩まされることはなかった。

手がかりになる研究がある。パプアニューギニアのキタバン島民や、パラグアイの狩猟採集民アチェを調べた研究では、ニキビがまったく見つからなかったと報告されている。ただし、これは集団どうしを比べた観察で、原因までは特定されていない。アトピー性皮膚炎やニキビのような疾患が、近代になって増えたと言われるのは事実だとしても、その原因が洗いすぎにあるかどうかは、あくまで仮説である。

肌は本来、油膜に覆われていて、何一つ手を加えなくてもほとんど荒れず、乾燥もしにくいといわれる。

そう考えると、現代のスキンケアには、「因果応報」という言葉が当てはまる面があるのではないか。洗顔やクレンジングで油膜を洗い流し、バリアを弱らせて、乾燥という悩みを自ら招く。そこで出てくるのが保湿剤だ。化粧水、乳液、美容液。次々と重ねるうちに、悩みの尽きない負のスパイラルに入り込み、不安から、また次の商品を買ってしまう。

私たちが保湿しなければならないのは、油膜というバリアを、自分で洗い流しているからではないか。すべてをここで断言してしまうと、誤解を生むかもしれない。少し強い注意喚起のつもりで、あえてこのように書いた。

現代人の生きる環境

ここまで、化粧品業界に対して、敵意とも捉えられかねないことを書いた。しかし、かく言う私も、洗浄剤や保湿剤を使っていないかと問われれば、答えは「NO」である。私たちの生きる社会は、狩猟採集民の世界とは違う。冷暖房、大気汚染、油、埃。文明がもたらしたこれらの刺激は、ジャングルで暮らす人々と同じようにすれば払いのけられる、というものではない。さらに言えば、私たち、特に女性は、化粧をし、日焼け止めを塗り、肌にさまざまな刺激を与えている。これを放置すれば、肌環境は悪化し、多くの疾患に悩まされることになるだろう。

つまり、洗浄から保湿という流れは、現代の暮らしに照らせば、必ずしも悪ではない。大切なのは、頻度と使う商品によって、バリア機能をできるだけ傷つけずにケアすることだ。そのために、効果や有効成分をうたう高価な商品や、広告費を上乗せした道具を買う必要はない。スキンケアの基本は、「何もしないこと」である。

なお、日焼け止めによる紫外線対策は、AADも推奨している。刺激を減らすことと、紫外線を防ぐことは、別の話だ。

「刺激を排除し、極力何もしないこと」こそが、究極のスキンケアになる。足すことで改善しようとする試みは、今日でやめてしまってよいと思う。

現時点での最適解

洗浄

私は学生時代から、多くの肌荒れに悩まされてきた。赤みや乾燥が出やすい肌質である。ただ、化粧をしない私にとって、日々の汚れを落とす作業は、それほど難しくない。基本は水だけの洗顔だ。肌のざらつきや角栓が気になったときにだけ、クレンジングを使う。

いま使っているのは、「菊正宗」のクレンジングだ。私が信頼している「としくん」(Hoyuの研究員)がすすめている商品である。詳しくは、彼のYouTubeを参照してほしい。この方の業界に対する考え方、価値観、そしてそれに基づき今進めている事業に私は強い共感を持っている。

https://www.youtube.com/@Toshikun1

日々化粧をする人にも、男性のような油分の多い肌にも、このクレンジングは使える。これまでいろいろなタイプの洗顔料を試したが、これがいちばん私の肌に合っていた。

保湿

保湿は、基本的に「乾燥が気になりだしたとき」にしか行わない。
化粧を落とすためにクレンジングをしている人は、肌に必要な油分まで落としている可能性が高い。そのため、保湿剤は必須かもしれない。ただ、保湿剤も肌に残る、ということは忘れてはいけない。洗浄剤を落としきれないと肌が荒れるように、程度は小さくても、保湿剤の油分などの成分は、肌に残るおそれがある。何もしないに越したことはないのだ。

私が使っているのは、白潤である。これも、としくんが(そして、私が信頼するあらゆる専門家が)すすめる、安価で優れた製品らしい。乾燥が軽いときは、乳液を使わない。研究によっては、化粧水と乳液を併用しても、乳液だけを使っても、保湿効果に有意な差はないという結果が出ているそうだ。ただ、乳液は油分が多く、肌に残って毛穴の詰まりにつながると感じているため、軽い乾燥には化粧水だけにしている。

冬やエアコンを使う時期には、カルテHDかキュレルの乳液を使う。基本は使わないという前提のうえで、乾燥のひどい季節は、適量を二度づけして保湿効果を高める。当然、顔にのせる量が増えれば、洗浄の頻度も増える。ただし、洗浄剤を使っても洗顔は一日一回を超えないように。

プラスアルファ

最低限のスキンケアは、これまでに述べたとおりだ。そのうえで、科学的なエビデンスが多い三つの美容成分も紹介したい。

としくんが「ABCメソッド」と呼ぶもので、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB(ナイアシンアミド)、ビタミンC(アスコルビン酸)である。レチノールは週に一度ほど、ナイアシンアミドは、忘れなければほぼ毎日使っている。ビタミンCは、手についた美容液で本を汚してしまったことがあり、いまは使っていない。

各成分の詳細は、私ではなく専門家の意見を参考にしてほしい。ただ、用法・用量を守れば有意な効果があることは、すでに分かっている。肌に合うなら、使ってみる価値はある。一方、美容業界では、横文字の新しい成分が次々に生まれるが、私はそれらを当てにしない。中には、肌に有効だと認められたものもあるだろう。しかし、肌の状態が安定しているなら使う必要はないし、成分で肌が改善するという謳い文句に、今後はだまされないつもりだ。

製品を選ぶうえで大切なのは、訴求成分や有効成分が十分な量、配合されていることだ。広告費をふんだんにかけ、有効成分を配合していると宣伝しながら、中身は、期待に見合わない製品もある。そもそも、中身の主成分はほとんどが水なのだから、そこにお金をかけすぎる必要はない。

良好な肌環境のために

ここまで述べてきたことは、信頼に足る専門家(利益のためでなく、研究員として化粧品を扱ってきた人々)、論文、そして私自身の経験に基づいている。当然ではあるが、万人に合うスキンケアというものはない。ただ、減らすスキンケアによって肌が荒れていくなら、強い刺激が放置されているか、肌のバリア機能が正常に働いていない可能性を疑ったほうがいい。そのときは、自己判断を続けず、皮膚科を受診してほしい。

肌に塗るものを足せば改善する、という幻想は、基本的には捨てたほうがいい。狩猟採集民が、ジャングルで洗浄剤や保湿剤を使っていたとは考えにくいからだ。すべては、あなたの肌がもともと備えているバリアを守ることに帰結する。生物にとって不自然な行動が、私たちの身体への刺激になり、長期的な肌環境の悪化につながりうるということを、美容業界はあまり語らない。

彼らにとって大切なのは、自らの利益を増やすことであり、私たちの肌の健康は二の次だからだ。

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