私の愛用する「グリーンパン」のフライパン――毎日食材に触れるものは「安全性」で選ぶ
フライパンや鍋は、私たちが日々料理に使う欠かせない調理器具である。
これらは私たちが口にする食材に直接触れ、高温にさらされ、使うほどに傷んでいく。調理中に出る煙やガスは、キッチンに立つ私たち自身も吸い込む。また、傷んだコーティングの破片や素材の微量な成分が、食材に混じることもある。
毎日、何年も使うものだからこそ、価格や手軽さだけでなく、「何でできているか」「安全性にどこまで配慮されているか」を基準に選びたい。そう考えて辿り着いたのが、「グリーンパン」のフライパンである。
フライパンの安全性とは
フライパンの安全性を考える上で、考慮すべき点は、次の三つである。
- 接触:食材に直接触れるのは、コーティングなどを含む表面部分。
- 加熱:高温になったとき、素材がどう変化するか。発生したガスは、調理する本人が吸い込むこともある。
- 劣化:傷や摩耗で、コーティングや表面は少しずつ傷んでいく。
この三点で、素材ごとの特性を見ていく。どれも「危険で使えない」という話ではなく、知ったうえで選びたい特性の整理である。
一般的なフライパンの弱点
フッ素樹脂加工(テフロン加工など)
最も普及しているタイプで、焦げつきにくく手軽である一方、先の三点に照らすと次の弱点がある。
- 加熱:高温時にはコーティングが分解して有害なガスが発生しうる。
- 素材:フッ素樹脂はPFAS(有機フッ素化合物)の一種。かつて製造に使われたPFOAは、日本でも2021年に化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止となった。PFAS全般への関心は、世界的に高まり続けている。
- 劣化:傷や熱でコーティングが傷み、焦げつきやすくなる。
- 剥離:剥がれた破片が料理に混じることがある。
一般的には通常の使い方であれば安全と説明されている。ただし、「温度管理に気を遣う」こと、そして数年で買い替えることが前提となる。
鉄・ステンレス製
コーティングがなく、素材への不安は少ない。丈夫で長持ちする点も大きな長所である。その代わり、扱いに慣れが要る。
- 焦げつきやすい。 予熱や油の量にコツが要り、失敗しやすい。
- 手入れに手間がかかる。 鉄は錆びやすく、油ならしや乾燥が欠かせない。
- 毎日の手軽さに欠ける。 忙しい日や、料理に不慣れな人には負担になりやすい。
アルミ製(コーティングなし)
軽くて熱伝導がよい反面、トマトや酢を使う料理など酸性の食材で変色しやすい。焦げつきも起こりやすく、現在はコーティング加工品が主流である。
「グリーンパン」はどこが違うのか
身近な道具の安全性を問い直すことから始まったブランド
グリーンパンは、ベルギーのヤン・ヘルスケンス氏とウィム・デ・ヴァーマン氏が2007年に立ち上げたブランドである。二人は学生時代からの友人で、2005年に調理器具の会社を共同で設立した。
きっかけは、設立を祝う夕食の席だったという。デ・ヴァーマン氏によれば、地元紙に従来のフッ素樹脂加工フライパンの安全性を問う記事が載っており、二人は目の前のフライパンを見て驚いた。そこで事業を悔やむのではなく、調理器具の作り方そのものを変える好機だと捉えた。
素材から見直し、自分たちのブランドで世に問うた
二人は、韓国の関連会社と協力し、PFAS(PFOAを含む)を使わないセラミック系のノンスティック(焦げつき防止)コーティングを実用化した。2006年には量産できる段階に至ったが、当時の取引先のブランドで、この新素材に関心を示すところはなかった。そこで、自分たちでブランドを立ち上げる道を選んだ。これが、2007年のグリーンパンの誕生である。同社CEOによれば、米国のテレビ通販で発売すると、4時間で2万5,000セットが売れたという。
このコーティングが、「サーモロン」である。同社の説明では、砂と同じ系統の鉱物成分を原料としている。同社は自らを、セラミック系ノンスティックの先駆けと位置づけている。
製造面でも環境負荷の低減に取り組む
同社は、自社工場で製造しており、コーティングの焼成工程でのCO2削減や、生産に使った水の処理・再利用など、環境負荷を下げる取り組みを公表している。具体的な内容や数値は、シリーズや時期によって異なるため、詳しくは公式サイトを確認してほしい。
【グリーンパン】公式サイトはこちら理念が製品に表れた三つの違い
こうした姿勢が製品に表れた結果、グリーンパンは他のフライパンと次の点で異なる。
| 比較項目 | フッ素樹脂加工 | 鉄・ステンレス | グリーンパン |
|---|---|---|---|
| 焦げつきにくさ | ◎ | △ | ◎ |
| PFAS | 使用あり | 使用なし | 使用なし |
| 極端な高温時の懸念 | 有害ガスの指摘あり | 素材由来の懸念は小さい | 懸念が小さい |
| 手入れの手軽さ | ◎ | △ | ○ |
| 価格 | 手頃 | 幅広い | 高め |
要するに、鉄・ステンレスの安心感とフッ素樹脂の手軽さを、無理なく両立しているのがグリーンパンである。
- 接触:コーティングにPFAS(PFOAを含む)を使用していない。毎日食材が触れる面に、素材への不安を抱えずに済む。
- 加熱:極端な高温でも、有害ガスの懸念が小さい。うっかり火にかけたままにしてしまった場面でも、心理的な余裕が違う。ただし、高温はコーティング自体を傷めるため、強火は避けたい。
- 使い心地:焦げつきにくく、少ない油で調理できる。調理も後片付けも軽くなる。
高価でも勧めたい理由
価格は決して安くない。それでも勧めたい理由は、次の四つである。
- 安心して調理できる。 素材への不安を減らし、調理に集中できる。
- 調理が楽になる。 焦げつきにくく、洗い物の負担も減る。
- うっかりに強い。 過熱時のガスを過度に心配せずに済む。
- 食卓に出せる見た目である。 そのまま出しても見劣りしない。
安さを優先すれば、他の選択肢はいくらでもある。それでも、毎日使う道具の素材に納得できることと、日々の調理が気持ちよく続けられることに価値を感じ、私はグリーンパンを選んでいる。
使ってみての感想
私がグリーンパンを強く勧めたいのは、安全性だけが理由ではない。買った当初は、身体への安全性が第一の理由で、こびりつきにくさなどの使い心地には、正直なところ半信半疑だった。
ところが、実際に使い始めて半年ほどが経つ現在(2026年10月時点)も、驚くほどこびりつかない。油を引かずに、こびりつきやすい食材を炒めたり焼いたりすれば、さすがに若干くっつくこともある。しかし、少量の油があれば十分くっつかない。安全性への安心感に加え、フライパンとしての使い勝手にも、大いに満足している。
私が使っているのは、最上位モデル「バルセロナ プロ」シリーズである。ただ、これを選んだ決め手は、最上位というのもさることながら、実は見た目だった。黒いボディに、銀色に輝くステンレスの持ち手を合わせたシックなデザイン(ホワイトとの2色展開)が、単純に好みだったからである。
使う上で、一点だけ注意してほしいことがある。純正の鍋蓋の金属製の持ち手は、調理中に高温になる。私は布巾などで手を保護して使っている。フライパンと蓋は別売りのため、もし気になる場合はサイズの合う別製品を選ぶことをお勧めする。
余談になるが、最初に購入した時、一人暮らしにもかかわらず26cmを買ってしまい、大きすぎたため慌てて24cmを買い直した。汁気のある料理を作りたい場合など、より深いタイプが好みなら、深型のウォックパンもあるので、探してみてほしい。
私の愛用品(24 cmフライパンと両手鍋)
フライパン(24 cm)
フライパン(26 cm)
フライパン(28 cm)
片手鍋(18 cm)
両手鍋(20 cm)※私は所有していないが購入を検討中)
長く使うための作法
セラミック系コーティングも消耗品であり、永久に使えるわけではない。使ううちに、焦げつきにくさは少しずつ落ちていく。ただし、扱い方で寿命は大きく変わる。次の点を守りたい。
- 強火を避け、中火以下で調理する
- 金属製のヘラやたわしを使わない
- 熱いまま水をかけて急冷しない
- 冷めてから、やわらかいスポンジで洗う
これは手間ではなく、道具と向き合う時間の一部だと捉えている。守ることで、満足できる期間は大きく延ばせる。
こんな人に勧めたい
- 調理道具の安全性を重視する人
- 家族、とりわけ子どもの食事を作る人
- ペット(特に小鳥)と暮らしており、調理時の空気にも配慮したい人
- 量より質を選び、気に入ったものを大切に使いたい人
安心は、毎日使う道具にこそ投資する価値がある。 これが、グリーンパンを手放せない最大の理由である。

